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【総選挙2014】黒竹田&白竹田が語る「お笑い総選挙・冬の陣 レリゴーでレッツゴー」

  • 竹田圭吾 (ジャーナリスト・編集者)
  • 2014年12月11日
黒竹田
黒竹田
総選挙、なんかタイミングが微妙だよね。
白竹田
白竹田
この時期にやらなくてもって感じてる人は多いだろうね。
黒竹田
黒竹田
投票日をバレンタインデーにぶつけるなんてひどいよな。
白竹田
白竹田
日付の最初の「1」が抜けてるよ! どんだけ勘違いしてんだよ!
黒竹田
黒竹田
いずれにしたって集中しづらいよ。
白竹田
白竹田
なにかと忙しい季節だからね。
黒竹田
黒竹田
2年前の衆院選も師走だったけど、投票用紙に「北島三郎」とか「水樹奈々」って書いてあった無効票がずいぶんあったらしいね。みんな紅白のことで頭がいっぱいで。
白竹田
白竹田
ないよ!
黒竹田
黒竹田
民主党の樽床伸二さんの票は「樽美酒研二」票が混じってたって話だよ。選管の人もゴールデンボンバーのファンでつい。
白竹田
白竹田
つい、じゃねえよ! でたらめ言うな!
黒竹田
黒竹田
今回は争点がはっきりしないのもなんかモヤモヤするよな。
白竹田
白竹田
はっきりしないというか、争点をうやむやにできて、野党への「追い風」や与党への「向かい風」も吹いてないからこのタイミングで解散したんだろうけどね。安倍総理は。
黒竹田
黒竹田
争点ってアベノミクスじゃないの?
白竹田
白竹田
総理がそう言ってるから、マスコミも引きずられてなんとなくそういう雰囲気になってるけどね。消費税の再増税を延期するって先に宣言してるんだから、国民の信を問うもへったくれもないでしょ。
黒竹田
黒竹田
お金をどんどん刷ればガム噛んだみたいに気分がすっきりして景気もよくなるって、うさんくさい話だと俺は思ってたけどね。
白竹田
白竹田
どんな経済理論だよ! リフレは「リフレッシュ」じゃなくて「リフレーション」の略だよ!
黒竹田
黒竹田
アベノミクスは解散しますっていきなり言われてもな。
白竹田
白竹田
バンドの仲間割れじゃないよ!
黒竹田
黒竹田
音楽性の違いってやつ? 麻生さん谷垣さんは安倍さんと違って、予定どおり再増税すべきって思ってたんでしょ。
白竹田
白竹田
閣内不一致、政府与党不一致っていう意味では、まあね。
黒竹田
黒竹田
争点をうやむやにできるっていうのは?
白竹田
白竹田
皮膚感覚の緊急性でいったら、日本の課題って「社会保障と経済をどうするか」に尽きるよね。少子高齢化と低成長のなかで、一人ひとりの暮らしをどう守って充実させていくかという。年金や子育てや円安だけじゃなくて、地方消滅ブラック企業も、老人婚活グローバル人材も外国人観光客も、あらゆるニュースがそこに帰結してくるでしょ。
黒竹田
黒竹田
それだと争点という感じがしないな。
白竹田
白竹田
各党の政策を比較してみるとわかるけど、方法論が違うだけで目標は一緒なんだよね。年金の制度設計や子育て支援をどうするかのディテールはけっこう違うんだけど、検証できないから正しいとも正しくないとも言い切れないし。
黒竹田
黒竹田
STAP細胞はありまぁす!
白竹田
白竹田
そっちは検証しなくちゃダメだろ!
黒竹田
黒竹田
でも、争点になりそうな問題ってほかにもあるよな。
白竹田
白竹田
まあね。
黒竹田
黒竹田
白竹田
白竹田
そっちかよ! 原発や集団的自衛権やTPPが争点だっていう人もいるけど、原発の再稼働は条件付き容認で徐々に廃炉が多数派の意見になりつつあるよね。集団的自衛権特定秘密保護法は賛否がわかれてるけど、「日本が戦争国家になる」みたいなヒステリックな批判は説得力がないし、自分や家族の暮らしや将来をそれより重視するのはむしろ合理的だよね。
黒竹田
黒竹田
いちばん大事なテーマで違いがはっきりしなくて、株価が上がって経済指標もものすごく悪くなってるわけではないから、なんとなくそのまま任せようか、という気分になると。
白竹田
白竹田
野党側の準備もできてないから、小選挙区制の本来の主旨である政権選択という意識も薄くなる。争点がはっきりしなくても、選挙で勝てば「国民の信任を得た」と言えるから、来年の通常国会以降、財政や安全保障法制の整備をどんどん進められる。このタイミングでの解散は、政権与党の戦略としては賢明だよね。
白竹田
白竹田
どうだろうね。あれを圧力っていうのは大げさと思うけど。
黒竹田
黒竹田
いや、有権者の知る権利を脅かしかねないよ。マスコミもだらしないな。総理がピーーピーーするのはピーに対する重大なピーーであって、メディアはもっとピーな総理のピーな部分を臆さずにピーするべきだよ!
白竹田
白竹田
なに自分でピーピー言ってんだよ! ビビって自主規制してんのお前じゃねえか!
黒竹田
黒竹田
政権の評価っていうのも確かにむずかしいな。
白竹田
白竹田
全部すばらしいとか全部ダメってことはないからね。民主党政権は評判悪いけど、低所得世帯への支援地方分権などほったらかしにされていた再分配政策はそれなりに進んだ。安倍政権の2年間も、デフレ脱却への着手や迷走していた外交の立て直しが進んだことは評価すべきだし。
黒竹田
黒竹田
安倍さんはこれだけ実績がありましたって選挙で盛んにアピールしてるね。
白竹田
白竹田
ただ、ほんとは「やったこと」と同じくらい「やらなかったこと」にも注目しないといけないんだけどね選挙制度の見直とか。
黒竹田
黒竹田
コメの穫れ高で票の重さに差がつくなんておかしいよな。
白竹田
白竹田
一俵の格差じゃねえよ!
黒竹田
黒竹田
なんかよくわかんなくなってきたけど、ようするに今回の選挙のほんとの争点ってなんなんだよ。
白竹田
白竹田
争点なんかいらないんだよ
黒竹田
黒竹田
…………。
白竹田
白竹田
ん?
白竹田
白竹田
なんで佐村河内なんだよ! 込み入った話になったからって聞こえないフリするな!
黒竹田
黒竹田
争点はいらないってどういうこと?
白竹田
白竹田
政党やマスコミが選んで定義する、1種類か2種類に絞りこまれた「争点」という意味ではね。それがわかった点で今回の選挙は有意義なんじゃないかな。
黒竹田
黒竹田
争点がなかったら投票先を選びようがないんじゃないの?
白竹田
白竹田
自分だけの争点を決めればいいんだよ。アベノミクスより集団的自衛権のほうが気になる、っていうのであればそれを基準に、安倍政権の方針に賛成なら与党に「いいね!」ボタンを、そう思わないなら具体的な反対策を示している党や候補者に「いいね!」ボタンを押せばいいんだし。
黒竹田
黒竹田
一人ひとり、自分で争点を選んで決めればいいと。
白竹田
白竹田
そうそう。法人税率でも雇用関連法でも、復興支援でも中小企業対策でも教育改革でも、「いちばんの争点」はなんでもいい
黒竹田
黒竹田
そのためには政策をきちんと比べる必要があるよね。
白竹田
白竹田
いや、なんなら政策に目を通さなくたっていいと思うよ
黒竹田
黒竹田
……お前、ポリタス読者にケンカを売るようなこと言うね。
白竹田
白竹田
政策をチェックするのはもちろん意味があるし、自分なりの争点を決めるにはなんらかのテーマについてちょっとは調べる必要があるけど、それを行うことが投票するかしないかの絶対条件であるべきではないよ。テレビや街頭で候補者を見かけたときの「この人は信用できそうだな」みたいな直感を頼りにしてもいいし、選挙ポスターの印象で決めてもいいと思う。
白竹田
白竹田
日本中でお前だけだよ、感動したのは! 党のマニフェストはあいまいだし、仕組み上、公約違反をあとで問われるものでもないので、あまり頼りにすると失望感が強くなるよね。政治学者の吉田徹氏がポリタスの記事で書いているように、実際には、投票というのは政策実行の約束というより、議員を信じて託すという行為に近いので、議員や党首・幹部のツイッターやフェイスブックの発言をみての個人的な印象をもとに判断するのも理にかなっていると思うよ。
黒竹田
黒竹田
この国と自分と家族の将来を決定づける政策選択の機会、みたいに深刻にとらえなくてもいいってことか。
白竹田
白竹田
2年前のアメリカ大統領選で、ニューヨークの大学で開かれた討論会で取材してたとき、インタビューした黒人のおばちゃんにパーン! て肩をたたかれて言われただろ。「そんなにシリアスに考えないで、選挙は楽しまなくっちゃダメよ!」って。
黒竹田
黒竹田
「オバマに100ドル賭けてる」って言ってたもんね。
白竹田
白竹田
そういう意味じゃねえよ!
黒竹田
黒竹田
日本でも群馬とかだとワインやネギをもらえるしな。
白竹田
白竹田
違うって! 選挙はお祭りだから、とりあえず当事者になって楽しもう、そうすることで政党や一人ひとりの議員との距離が互いに少しずつ近くなって、結果的に政治や政策の実行サイドの有権者志向や、有権者サイドの納得度も高まるって意味だよ。ソーシャルメディアも駆使した選挙マーケティングの成功例としてよく指摘される、オバマの大統領選キャンペーンのコンセプトもそういう情感や共感を重視していたよね。
黒竹田
黒竹田
そうは言っても、投票する議員や政党を選ぶのに、やっぱりなにか目安はほしいっていう人も多いんじゃないの。
白竹田
白竹田
そうだね。たとえば、その意味でも「やったこと」と「やらなかったこと」に注目するといいかもね
黒竹田
黒竹田
指名されたのに氷水をかぶらなかった政治家は許せないよな。
白竹田
白竹田
アイス・バケツ・チャレンジの話は蒸し返すなよ! 仕事の話だよ。政治家の仕事ってなんだと思う?
黒竹田
黒竹田
議会で大声で叫ぶことでしょ。「お前が早く結婚しろ」とか「産めないのか?」とか。
白竹田
白竹田
それはセクハラ都議!
黒竹田
黒竹田
「川藤を出せー」「ほんまに出すやつがあるかー」って昔の阪神ファンみたいに球場のスタンドで練習してるって話じゃないか。
白竹田
白竹田
してないよ! 今回の選挙で選ぶのは「政治家」というより厳密には「国会議員」で、国会議員の仕事は、国会で議論して法律をつくることだよね。
黒竹田
黒竹田
うん。
白竹田
白竹田
それぞれの国会でどんな法律ができたか、それぞれの議員がどのように法律の作成にかかわったか、というのが、国会議員を評価する基準としては本来いちばん大切なものと言えるよ。
黒竹田
黒竹田
それを確かめる方法ってあるの?
白竹田
白竹田
衆議院のホームページには、国会の会期ごとに政府から提出された、もしくは議員から発議された法案、その審議過程や審議の状況、成立したかどうかの結果、内容などが詳しく載っているよ。
黒竹田
黒竹田
それを全部チェックするのも面倒だなあ。
白竹田
白竹田
自分の選挙区の立候補者とか、特定の議員について調べるなら、政治学者の菅原琢氏が国会議員の活動をまとめたウェブサイト「国会議員活動白書」を公開している。個々の議員の国会での発言回数と内容へのリンク、質問主意書の提出数などがデータ化されている。
黒竹田
黒竹田
これは検索しやすいね。
白竹田
白竹田
ほかにもNPO法人の「万年野党」のように、国会での質問時間、質問回数、質問主意書数などで議員をランク付けしたリストなどを公開しているところもあるよ。
黒竹田
黒竹田
なるほど。それぞれの議員がどんな活動をしていたかはそれでつかめるけど、データだけで判断していいのかな。
白竹田
白竹田
そこは注意も必要なんだ。菅原氏が「国会議員白書」の注意書きに書いているけど、政府や党の要職、役職についている議員はおのずと発言の機会が限られるし、体調の問題などで休んでいた場合もある。小政党のほうが質問回数が多い仕組みになっているので、質問の回数だけで比べるのはあまり意味がない。できれば質問や発言の内容を確認したほうがいいね。自分の選挙区の立候補者だけならそれほど時間もかからないだろうし。
黒竹田
黒竹田
いずれにしても、1票の重みとか未来を選ぶとかって気張らずに、「ありのまま」で決めればいいってことか。
白竹田
白竹田
レリゴーで投票所にレッツゴーってとこだな。
黒竹田
黒竹田
まだちょっと悩むけどね。一人だけ選ぶなら福山雅治徳永英明か…。
白竹田
白竹田
紅白忘れろよ! いい加減にしろ!

著者プロフィール

竹田圭吾
たけだ・けいご

ジャーナリスト・編集者

1964年東京・中央区生まれ。2001年から2010年までニューズウィーク日本版編集長。現在はジャーナリスト・編集者、名古屋外国語大学客員教授。フジテレビ『とくダネ!』『Mr.サンデー』などのコメンテーターも務める。

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